人類の物理学の常識を根本から変えてしまった、相対性理論(1905年の「特殊相対性理論」と1916年の「一般相対性理論」)。当時(というか結構前々からですが)、ニュートン物理学を基盤としたそれまでの物理学理論に色々矛盾が見つかり、世界中の物理学者たちは頭を抱えていました。その状況を打破したのが、アルベルト・アインシュタインでした。しかもかなり大胆に。彼が言い出したことは、ざっくり言うと次の通り。
「なんでか理由は分かんねーし証明すらできねーけど、
①光はどこからどうやって発しても速度が変わらない(=高速度不変の法則)ってのと、
②物体の運動を地上から見ようが、太陽系の外からの視点で考えようが、物理法則自体は同じ(=相対性原理)ってことにしようぜ。
いいじゃん、そう決めちゃえば全部解決すんだし」
科学的発想というのは、「AだからBが言える。BだからCが言える。・・・」というように、「ここまでは正しい」と言えて初めて次のステージに論を進めていくわけですが、アインシュタインの場合は、①や②が正しいと証明しないまま、「正しい」と決めて次に進んだわけです。ほんとに①や②が正しいかは、後で考えりゃいいじゃん、という発想。
この強引さによって、世紀の大理論を打ち立て、Facebookでチェックインしてリア充アピールができるようになり(GPSの話です)、未知の天体だって見つかったわけです。
今までの論から積み上げ式に導き出そうとしていたら、絶対にたどりつけなかったことでしょう。後で導き出せると仮定して、未来から話を始めるというこの考え方、実はマーケティングにも使えます。例えばApple社は、市場調査から「だからこういう商品が売れる」と導き出して製品作ることはせず、「こういう商品があるべき」という未来論から始めるそうです。だからジョブズ氏のプレゼンは、開発の経緯には触れず、その商品によってこれからがどう変わるかの話をする展開になっていました。これはソフトバンクの孫さんも同じです。
「証拠は無いけど」とか「理由は無いけど」を悪者にせず、理想から話を始めることが、イノベーションにつながるのかもしれません。就活生の中でも、「自分にできるかどうか分かんないし」ということを折り込んだ上で「やりたいこと」を語る学生がいますが、そういう話、正直聞く側はすっっっっっごく、つまらないです(かく言う私もかつてそういうタイプでした)。やれるかどうかは分かんないけど自分にもやれるということにして、未来を考えた方がよっぽど考えが深まりますし、その分実現可能性は高まります。
あれこれ悩むよりとりあえず前に進めば?と、アインシュタインと相対性理論は私たちに投げかけているような気がしてなりません。
ちなみに、「なんで物体は光より早く移動できないの?」など、相対性理論についてざっくり知りたい人には、
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がめちゃくちゃオススメです。