教養力就活

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知識よりも、知識を使いこなす力/伝説の東大入試が教えてくれる「理解」の大切さ

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世間では「最も難しい」と言われることの多い、東大入試。しかし、「最も深い」と言った方が、実は正しい気がします。とりわけ、数学の問題の深さは、時に芸術的ですらあります。中でも2003年度理科(理系)前期入試の〔数学〕第6問は、「東大入試史上、最も美しい問題」とも呼ばれ、受験生や予備校、そして東大内でも、なかば伝説となっています。

その問題というのが、コレ。


「円周率が3.05より大きいことを証明せよ。」

 

マジです。ちなみに、「3.14・・・は、3.05より大きいから。」は×です。
本当に自明かどうかを問うているので、π3.14を前提にしてはいけません。でもこの問題、必要な知識は、高2くらいで誰もが習う「余弦定理」や「加法定理」で十分。さらに、「円周率は3より大きいことを証明せよ」だったら、小学生の知識で解けます。

数学の問題に限らず、東大の入試問題は、難しい知識をたくさん持っていることよりも、みんなが当たり前だと思っている基礎知識について、立ち止まって深く「理解」したかどうか、知識を使いこなせるレベルまで知肉化できているかを試す傾向にあります。一般的な高校教科書に載っていない知識を使わないと解けない問題は、本当に出題されません。

以前、東大レゴ部の作品がネット上で話題になっていました(この部の創設者の一人である三井淳平さんは、日本人初のレゴ認定プロビルダーでもあります)。レゴ自体は、5歳児くらいでも使えるおもちゃ。それを「こんなことまでできるの?」という高い水準で使いこなしたことが、驚きの源泉だったのではないでしょうか。

東大に言わせれば、「基礎」=「簡単」では必ずしもなく、「基礎」とは元来「本質」や「根本」を意味するものであり、自在に使いこなせるまでに突き詰めるべきものだということなのでしょう。確かに、例えば「基礎物理学」の分野は、決して物理学の初歩的な領域ではなく、物理のより本質的法則(それはもはやこの世界の成り立ち)に迫る、最先端科学の領域です。


またこの問題は、みんなが正しいと考えていることについて、「ほんとうにそうなの?」と疑い、考える力を試しているとも言えます。「公式だって教わったから正しいんでしょ」というように、思考を停止するのではなく、「そもそも何がどうなってこの公式になってるんだっけ」「そもそも正しいんだっけ」と考えてみてよ、というメッセージを感じます。
みなさんは、「国家を、社会を、知を牽引していくエリートたる者、ものごとを根本から、粘り強く考えられなければならない」という、強烈な意志を感じませんか。

ひるがえって私たちも、知っているつもりになったり、逆に、知識が足りないことをできない言い訳にしてはいけませんね。

ちなみに当時、巷では、「円周率を3としてもよい」という新学習指導要領が話題となっていました。東大のこの問題は、「円周率が3だなんて、ナンセンスだ!」ということを暗に主張する粋な風刺だったのかもしれません。

 

【解説は次のポストで】